残尿感とは
残尿感とは、排尿後も「下腹部がスッキリしない感じがする」、「尿が残っている感じがする」といった状態のことを指します。
残尿感は、「実際に尿が残っていないにも関わらず自覚するもの」と、「排尿した後に尿が残っているもの」で原因が異なってきます。
「実際に尿が残っていないにも関わらず自覚するもの」は、膀胱や尿道の知覚的な異常により生じます。主な原因疾患としては膀胱炎や過活動膀胱、膀胱結石、膀胱腫瘍などがあります。
一方、「排尿した後に尿が残っているもの」は、膀胱から尿道までの排出障害が考えられ、主な原因疾患としては神経因性膀胱や前立腺肥大症などがあります。
治療方法
膀胱炎の場合
膀胱炎と診断された場合は膀胱内部で繁殖した細菌を死滅させるために抗菌薬の投与や生活習慣の指導を治療の基本として行います。
ただし、最近は特定の抗菌薬では効かないタイプの細菌(耐性菌)もあるため初診時に尿の培養検査も併せて行うことで抗菌薬の適性使用にも努めます。
また、閉経後より膀胱炎を頻回に繰り返している場合には漢方薬やエストロゲン製剤で膣の粘膜環境を改善することで予防策を講じることもあります。
神経因性膀胱の場合
脳や脊髄といった「中枢神経」、脊髄から膀胱に至るまでの「末梢神経」のいずれかの異常によって引き起こされる下部尿路機能障害を神経因性膀胱と言います。
排尿に関わる筋肉が過活動に至ることや尿道括約筋が弛緩してしまうことによる「蓄尿障害」や排尿に関わる筋肉が逆に弛緩してしまうことで生じる「排尿障害」といったように病態は様々です。
まずは原因を精査した上での内服治療による排尿自立を目指しますが治療に難渋する場合はボツリヌス毒素の膀胱壁内注入療法や尿道カテーテル留置を検討することもあります。
骨盤臓器脱の場合
出産や加齢などにより骨盤底の筋肉が緩み膀胱や子宮、直腸、膣などが膣口から出て来てしまう病態を言います。
とりわけ膀胱が飛び出してしまう膀胱瘤では膀胱が敏感になることで頻尿になったり更に進行することで逆に残尿感が出現することがあります。
骨盤臓器脱では特効薬なく、ダイエットや骨盤底筋群を鍛えるトレーニング、ペッサリーという膣に入れて膀胱などを支えるシリコン素材の装具治療がありますが標準的な治療は手術(ロボット支援下仙骨膣固定術)になります。近隣の医療機関と連携しての治療を提供いたします。
過活動膀胱の場合
膀胱の異常収縮や知覚の変化に伴い尿意切迫感を必須の症状として更に頻尿や失禁なども合併しうる病態を言います。
治療の基本としては内服薬による治療と行動療法としての膀胱訓練や骨盤底筋トレーニングがあります。内服薬の種類によっては緑内障や認知症の進行、心機能悪化に影響を及ぼすものもあるため持病や常用薬との飲み合わせを考慮しての加療が大切になります。