前立腺がんについて
前立腺がんは中高年の男性において注意すべき病気で近年、日本でも増加傾向にあります。年間約10万人もの新たな患者さんが診断されており男性がんにおける罹患者数第1位に至っております。
原因は多岐に渡り、加齢、遺伝、食生活、男性ホルモン等の影響が示唆されています。
初期の段階では自覚症状に乏しいことが多く進行するにつれて残尿感や頻尿、血尿といった排尿症状が出現することがあります。また加齢が原因と放置していた腰痛が実は前立腺がんの骨への転移に伴う症状だったということも散見されます。
当院では50歳代以上の方を中心に前立腺がんの腫瘍マーカーPSAの採血検査を啓蒙することで早期発見に努めたいと考えております。
現在、日本の50代以上のPSA検査受診率は欧米の受診率である70〜80%と比較するとまだまだ少ないのが現状です。欧米では高い受診率から前立腺がんでの死亡率は減少傾向にあります。これまでPSA検査を受けたことがない方も含めてちょっとでも心配に思う事や相談したい事があればお気軽にご相談ください。
前立腺がんの検査
前立腺がん検査は可能性を調べるスクリーニング検査とその検査の結果で陽性になった場合に確定診断につなげる精密検査・病理検査に分けられます。
スクリーニング検査では、一次スクリーニング、2次スクリーニングに分けられます。
一次スクリーニングは血液を採取して調べる腫瘍マーカーのPSA検査と前立腺超音波 (エコー)検査、2次スクリーニングではMRI検査を行います。
一次スクリーニング
PSA検査
PSA検査とは血液検査によりPSA(前立腺特異抗原)の値を調べる検査です。
PSAは前立腺の上皮細胞から分泌されるタンパクであり大部分は精液中に分泌されますが血液中にも微量ではありますが取り込まれています。
PSAは前立腺癌の他にも良性疾患である前立腺肥大症や急性前立腺炎などでも上昇することがありますのでまずはしっかりと精査をすることが大切です。
一般的な基準値は4ng/ml以下に設定されますが若年層では3.0ng/ml以下として考慮する場合もあります。また前立腺肥大症やAGA(男性型脱毛症)の薬の副作用でPSA値が見かけ上、低く表記されている事もあるため自身の常用薬に注意を払うことも大切です。
心配であれはご相談ください。
直腸内触診
直腸内触診とは医師が指を患者さんの肛門から直腸内に挿入し触診により前立腺に異常がないかを確認する検査です。
前立腺は弾力性を持っていますが、がんを発症している場合にがんの部分がゴツゴツして触れることがあります。
稀ではありますがPSA検査で陰性でも触診で前立腺がんが指摘されることもあります。患者さんと相談の上、直腸内触診検査は省略することも可能です。
前立腺超音波(エコー)検査
前立腺超音波(エコー)検査とは、お腹の上から超音波を当てて前立腺の形や大きさを調べる検査です。
前立腺の容積を正確に測定することが可能なため、前立腺肥大症をはじめとした前立腺疾患の診断に不可欠な検査です。前立腺がんに前立腺肥大症が併存する事もあります。
二次スクリーニング
一次スクリーニング検査のPSA検査、(直腸内触診)、前立腺エコー検査の後に、MRI検査を行って前立腺がんの有無を詳細に評価します。
MRI検査はがんの局在を診断する上で大変有効な検査になります。磁気を使った検査ですので材質不明の体内金属がある方は撮影ができないこともあります。
MRI検査を行う際には連携先の医療機関(取手市内・守谷市内・我孫子市内)にて撮影を実施していただきます。
病期診断
病期診断とは前立腺がんと診断された後に、がんの転移の有無を評価してステージングを行う事です。とりわけ前立腺がんは骨盤内リンパ節や骨が好発転移巣となるためCT検査や骨シンチグラフィー検査、DWIBS検査等で精査することで治療方針を策定します。
前立腺がん検診
PSA定期検査
単回の針生検ではがんが発見されない場合もあります。同じ患者さんに間隔をあけて複数回の針生検を行うことで初めて診断に至る事もありますので検査結果で異常を指摘されなかった場合でも定期的にPSA検査を受けることが大切になります。
よくある質問
前立腺がんの治療には手術が必要ですか?
前立腺を摘出する手術による治療を行う場合もありますが、進行度、症状、既往歴や体力によっては放射線療法やホルモン療法などの治療をご提案する場合もあります。最も大切な事は患者さんとよく相談し、身体的側面と社会的環境を勘案した治療法を策定することと考えております。
手術や放射線治療が必要になったら、どうなりますか?
提携している手術設備や放射線治療設備の整った医療機関をご紹介させていただきます。また、手術内容の相談やご説明なども当院では行っております。分からない事や不安な事など、些細な事でもお気軽にご相談ください。また、治療後のフォローを当院で受けていただく事も可能です。
ホルモン治療(内分泌療法)は通院で行うことができますか?
当院でホルモン治療を受けて頂くことは可能です。
主な適応としましては、①進行がん、②重篤な合併症がある等、全身状態の悪い非転移がん、③高齢者における非転移がん、④手術や放射線前後の補助治療が挙げられます。定期的な採血やC T検査等にて病勢を評価しつつ治療を行います。
抗がん剤治療を行うことはできますか?
抗がん剤治療を行う場合は提携した医療機関にご紹介し治療をお願いすることになります。治療前のご相談や治療後のフォローなどはかかりつけ医としての責務を全うしますのでご安心ください。