尿路結石

尿路結石

腎臓や尿管といった尿の通り道に結石が出来る病気です。近年、食生活の欧米化に伴い増加しており男性の7人に1人、女性の15人に1人程度の割合で罹患するとされています。
腎臓結石は腎臓の中の腎盂といわれる空間に結石が出来る病気です。無症状のことが多いのですが、気づかない間に巨大な結石に成長したり、将来尿管へ下降する事で尿管結石として症状を引き起こす潜在的な危険性を持っています。
一方、尿管結石は腎盂から流れ出る細い管(尿管)に結石が詰まる病気です。腰や腹部の激しい痛み・血尿などの原因となります。放っておくと腎臓の機能が低下したり、腎盂腎炎の原因となり高熱を来たしたりするため注意が必要です。尿に血が混じり、左右どちらかの背中や横腹が痛くなった場合は、この病気の可能性が高いです。
また、気温の上昇に比例して患者数が増加するのも特徴の一つです。夏場は汗として体内の水分が多量に出ていくことで尿が濃縮され尿中の成分が結晶化し易くなります。一度、患うと半数以上の方が再発を繰り返す病気でもあるため定期的な身体のメンテナンスが大切になります。

尿路結石の症状

典型的な最初の症状は突然生じる激しい腹痛や血尿になります。
腎結石では無症状の事も多いのですが、結石が動いて尿管内に落下して尿の流れを閉塞してしまうと腎臓の中の圧が上昇して腰背部から下腹部にかけて激痛が生じます。とりわけ夜間や明け方といった身体がリラックスしているタイミングに発作が出やすいのが特徴でもあります。これには自律神経が関わっており夜間に副交感神経が優位になることで尿管の蠕動が活発になり結石を移動させた結果として結石による尿管の閉塞が生じるとされております。
痛みが始まるとのた打ち回るような激痛や嘔気が数時間も続くことがあります。
また、尿の流れが閉塞することで腎盂腎炎を併発して発熱をきたすケースも珍しくはありません。
痛みの感受性は個人差もあり突然の腰痛の全てが尿管結石による訳ではありません。大動脈解離や心筋梗塞といった命に直結する疾患との鑑別も大切になりますので少しでも心当たりがある場合はご相談ください。

尿路結石の原因

結石は、尿の流れが停滞することや慢性的な尿路感染症、代謝異常疾患、内服薬などが原因で生じるとされております。
とりわけ、尿流の停滞は前立腺肥大症や神経因性膀胱といった病気だけでなく寝たきりで過ごす時間が長い患者もリスク因子となり得ます。
尿中に含まれるカルシウムやマグネシウム、尿酸などの成分が過飽和状態になり結晶化することで結石は形成されますがその原因は多因子であり遺伝的要素や生活習慣も関わるとされています。
ご家族で罹患されたことがある方がいないかをチェックしておくことも大切です。

生活習慣の危険因子

  • 水分摂取量が少ない
  • 運動不足や睡眠不足
  • 肉類をよく食べるなどの偏食
  • 糖分や塩分の摂取量が多い
  • カルシウムの摂取不足

入院、治療などによる結石リスク

  • 長期入院などで、臥床している期間が長い
  • ステロイドの使用

尿路結石になりやすい病気

  • 尿管狭窄、前立腺肥大などの尿路通過障害
  • 脂質異常症(高脂血症)
  • 高カルシウム血症
  • 原発性副甲状腺機能亢進
  • 骨粗鬆症
  • クッシング症候群
  • シスチン代謝異常
  • 炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎・クローン病など)

結石の予防

尿路結石は再発しやすい病気です。5年以内に約50%の方が再発すると言われており、とりわけ再発を防ぐために生活習慣を改めない場合では80%以上の割合で再発を認めます。
当院では結石の治療もさる事ながら再発予防にも力を入れております。適切な食生活、水分摂取などの指導や投薬を行うことで治療後の再発リスクの低下に努めます。また、結石が自然に排出して御自身でお持ちの際には結石の成分分析を行い再発予防のアドバイスなどを行うことも可能です。お気軽にご相談ください。

水分補給

体型を考慮に入れないといけませんが、目安として1日1.5~2リットル以上の水分補給が望ましいとされています。十分な水分の摂取は再発リスクの低減に直結しますが、ビール等のアルコールは控えてください。ビールを飲むと一過性に利尿がつきますが、その後に代償性に尿が少ない状態になり結石形成の危険性が増します。アルコール摂取により血液の中の乳酸濃度が高くなり腎からの尿酸の排泄量が減少し高尿酸血症になり、その後において長期的には尿酸排泄量が増加してカルシウム結石や尿酸結石の発生するリスクが高くなります。
また、運動後や就寝中は水分が不足することが多いため前後に分けて水分をこまめに摂取するようにしましょう。

食事

水分補給と並行で食事改善も心掛けるようにしましょう。規則正しくバランスの取れた食事をすることが大事です。
具体的には以下の事に気をつけましょう。

  • カルシウム・マグネシウムなどのミネラル、クエン酸を摂る
  • 塩分、糖分、プリン体の含まれる食品・飲料、動物性の脂質・タンパク質を摂りすぎない
  • 食事を食べ過ぎない、寝る3時間前には夕食は済ませておきましょう

結石ができやすい食品

  • 塩分や糖分
  • ホウレン草、タケノコ、ブロッコリー
    ※茹でた後、冷水にさらしてから食べてください

    (茹でるとアク抜きになってシュウ酸を減らせるので、ほうれん草のお浸しはOKです。)

  • 動物性たんぱく質、脂質
  • レバー
  • 紅茶
  • ココアやチョコレート
  • ビール

など

尿路結石・尿管結石の検査

まずは問診させて頂くことで大部分のケースは診断の推測が可能です。
痛みの発症機転や部位、性状といった情報に加えて既往歴や家族歴なども有益な情報になり得ます。また尿検査や各種画像検査も診断に有用な手段になるため適宜、精査の過程で実施します。

触診

触診では腰などを押す・叩くなどをして痛む部分や位置を確かめます。
この時に触るだけでは痛みがないのですが、押したり叩いたりすると背部に痛みが生じます。

尿検査

肉眼で確認し、さらには顕微鏡で肉眼では確認できない量の血尿や白血球を確認します。
尿路結石の場合、白血球や潜血を認めることが多いです。

血液検査

採血をさせて頂き、尿素窒素、クレアチニン、尿酸、カルシウムなどの数値を調べて腎機能が正常に働いているか、合併症などが起こっていないかを確認します。

腹部X線検査

結石で最も多いシュウ酸カルシウム結石はX線検査で確認可能で、大きさの有無や位置がわかります。
ただし、レントゲンに映らない結石(尿酸、シスチン、キサンチンなど)などもあります。

超音波(エコー)検査

結石で尿がせき止められて、腎臓が腫れていないかなどを確認できます。
腹部X線検査と違って成分に関わらず結石の発見可能ですが、結石の部位や患者さんの体型によっては描出が困難なケースも少なくありません。

造影CT検査

X線検査や超音波検査ではわからない結石が確認可能です。また、腎臓の腫れや尿路の狭窄もわかります。結石の硬さを客観的に数値化(CT値)でき、その後の治療方法の策定にも役立つ必要不可欠な検査です。

尿路結石・尿管結石の治療

尿路結石の治療はそのサイズや部位によって方法は様々です。

1cm未満の結石

発熱や嘔吐などの症状がなく、1cm未満の場合は砕石治療を検討可能ですが、自然排出出来る可能性が高いため、症状を緩和させて自然排出を促す保存療法を行います。
保存療法は水分摂取と適度な運動を進めており、尿管の働きを活発化させます。
また、並行で症状を緩和させる鎮痛剤や尿管の痙攣を抑える鎮痙剤、尿管を広げる排石促進剤など薬物療法を行います。

1cm以上の結石

この大きさになると自然排出は難しいので砕石治療によって結石を粉砕する措置を取ります。
結石を細かく砕いて自然排出を待つか、砕いた石を除去します。

砕石治療

経尿道的尿管砕石術(TUL)

全身麻酔や下半身麻酔を打ってからの手術となります。ボールペンの芯ほどの大きさの内視鏡を尿道から膀胱に挿入し、尿路内の結石を確認します。その後、レーザー照射によって結石を砕いて除去します。手術自体は1~2時間程度で終了します。
術後2週間、尿管ステントというチューブを挿入して腎臓から膀胱までの尿の流れを確保する場合があり、ステントを抜去するまで血尿や排尿痛を起こすことがあります。

経皮的腎砕石術(PNL)

腎臓の腎盂の中にある大きな結石や、尿管からカメラで到達できないような場所に結石がある場合に行います。腰や背中の皮膚に小さい穴を開けて内視鏡を挿入し、レーザー照射によって結石を砕いて除去します。
治療後の傷跡はにきびを潰した後くらいの小さなものになります。

体外衝撃波結石破砕術(ESWL)

体の外から衝撃波を当てることで結石を砕き、自然排出を待つという方法です。
衝撃は結石だけに収束します。
基本的にレントゲンに移るものだけが対象で、また1個の結石が対象の為、複数個結石がある方には向いていません。

※手術が必要な場合は、患者さんと相談の上で提携している医療機関をご紹介し、スムーズに治療を受けられるように努めます。

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